部屋にもプロポーションがある

「広くするなら居間。それは、居間は住まいの中心的な存在となるスペースだから」とお話しました。
ところが「中心」ということに気をとられて、うっかりすると居間というスペースが、交差点のド真ん中の位置になってしまうことがあります。これでは落ち着きがなく「気持ちいい」とはとてもいえません。居間は、川の流れでいえば、「よどみ」のような位置に計画することをオススメします。
居間は広ければよいが、ただ広いだけじゃなくて、「気持ちいい」空間でなければなりません。空間を気持ちよくするための工夫はいろいろありますが、部屋の幅と奥行きの割合(プロポーション)を整えることもそのひとつです。人間だって健康な人というのは、身体の骨格、肉付き、プロポーションはもちろん、思考や行動まで含めて、見事にバランスされているでしょう。住まいだって同じです。健康な住まいは美しいプロポーションを持っているはず。
例えば、南に面しているからといっても、うなぎの寝床のように細長く横長のプロポーションの部屋では、落ち着いた「よどみ」の空間をつくることは難しくなります。
この「よどみ」をつくるためには、居間の奥行き(厚み)として少なくても二間(3.6m)くらいは確保したいものです。しかし、厳しい条件のなかで、この厚みを確保できないときには、室内だけで、部屋としての広さや厚みをとることばかりに気を奪われずに、外部の空間を取り込んで不足分を補ってみるということを検討してみてはいかがでしょうか。

端から端まで見通せると

小さい住宅を小さい住宅に見せないため、小さい住宅として使わないための手段として、どんな小さな住まいでも(逆に小さければ小さいほど)必ず住まいのどこかに、最も長く、大きく見える部分を見通せるようにつくることがポイントです。
もちろん、いつも見通せるわけではありません。部屋と部屋との間仕切りを、動かない壁、としてしまわないで、スライドできる建具などで仕切ってあげること。それを開けると住まいの端から端までが一望に見渡せて、部屋から部屋へと視線が伸びて、いちばん遠い部屋まで見通すことができるようになります。この時の建具は、開けたときに壁の中に引き込まれて、建具が視界から消えてしまうような工夫が気持ちよさをさらに大きくします。
端から端まで見通す仕掛けは、建具を開けて視線を貫通させる方法の他に、プランをL字型やコの字型、あるいは雁行型にしてあげることでも、つくることができます。
こういったプランの住まいでは、部屋の中から窓の外に目をやると、見えるのは他人の家ではなくて、自分の住まいが見えるということもできるようになります。
窓越しに自分の家の明かりがついたり消えたり、そのなかに見える家族の姿に、かくれんぼをして遊んでいるような楽しさを味わうことができるというわけです。

先が見えないと

視線が通って住まいの全体像が見渡せると、広々とした感覚を手に入れることができますが、反対に、空間の広がりがわかってしまうと面白みに欠けることになります。
広がる空間を折れ曲げてみたり、凹凸にしてみたりすると、視線の届かないところができて、どこまで広がっていて、どんなかたちになっているのかと、想像する楽しみが出てきます。見通しがきかないので、あそこで行き止まりということがわからなくて、頭の中で、空間が先へ先へとのびて、どんどん広がって行きます。
こんな経験を味わうことができるプランとは、例えば、部屋から部屋へ移動していくと、またもとの部屋にたどり着くという、ぐるぐると回ることのできる、行き止まりのないプランです。家の中をぐるぐる回って遊んでいる子供たちは、変化とエンドレスの楽しみをいちばん知っているのでしょう。住まいの中でぐるぐる回れるルートを自由に設定できて、移動につれて変化する空間の違いを楽しむことができます。行き止まりがないということは、ここでおしまい、ということがないので、奥行きのある広がりを持っているように感じることができます。
この回遊性は、基本的には生活の便利さ、合理性に裏打ちされているものですが、生活の楽しさと感じることができればいちばんではないでしょうか。